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フィンランド

#07 フィンランドの高齢者施設が教えてくれた最期まで自分を生きるために

みなさま、こんにちは。
フィンランドの暮らしも間も無く30年。福祉と教育の分野で日本とフィンランドを繋ぐ仕事をしております、ヒルトゥネン久美子と申します。
2023年2月16日に「フィンランドの高齢者福祉の今と未来」についてお話しさせていただく機会を得ました。
今回はそれに先立ちまして、このウェルマガジンにてフィンランドの高齢者施設を訪問する中で気付いたことを少しご紹介したいと思います。

ヒルトゥネン久美子氏。全日空、フィンランド航空客室乗務員を経てフィンランドに移住。2003年にKHジャパンマネージメント株式会社を設立。代表を務める。 フィンランドと日本の両国交流における、主に教育と福祉の分野での研究、視察研修等の通訳・コーディネート、アシスタント業務を担う。         「本物のフィンランドを日本に紹介し、日本の未来構築に貢献すること」をミッションとしています!

私は仕事の関係で日本の視察団の方々とフィンランドの高齢者施設を訪ねることがよくあります。
ほとんどの施設が扉の奥の生活はとてもゆったりとしています。
介護を受ける側、または介護を提供する側というような線引きが感じられないほど、人間関係も自然体で同じ空間に共に暮らしている印象を受けます。
始めの頃は「もう少し高齢者に気配りを示すべきでは?」とか「放っておかれている高齢者もいるのでは?」と日本人的マインドでハラハラしてしまうこともありましたが、次第にそのような状況への理解が生まれてきました。
高齢者の方々は施設にいても、”自分の家”で暮らしているのでした。個々のこれまでの生き方が尊重され、できるだけ最期まで自分を生き続けることができるように、過剰な手助けはせず自然な形でその環境を整えることが高齢者福祉での「正しい支援のあり方」と考えられ努力がされています。

         多くのフィンランド人は一生の間に数えきれないほど湖の辺りで何もしない時間を過ごします。                              風や小さな波の音を聞きながら、その瞬間、過去そして未来に思いを馳せているのかもしれません。  

集団の和を大切にする日本では、施設のスケジュールに沿って皆が同じく行動する生活にもあまり違和感は感じません。起床時間、日中のアクティビティはもちろん、決められた時間にお風呂に入り、また食事の量も丁寧に個別計算され提供されます。
ですが、これら担当チームにより作られた“私にとってベスト(?)”な生活プログラムは、もしかするとフィンランド人の高齢者には違和感を感じさせるのかもしれません。というのは、フィンランド人は常に「私はこういう生き方をしたい」という思いがあるからです。施設に入った途端に自分を諦めることはしにくいのです。ですので、うまくいっている施設であればあるほど、全てにおいてフレキシブルに対応します。

個別のケアプランに沿って施設内の活動や食事時間でさえ、かなり幅を持たせています。朝寝坊気味の方は11時に朝食ということもありますし、夜22時のニュースを見てから寝るという方もいていいわけです。
好きな食事は喜んでおかわりしますし、食べ過ぎた時には次の食事は控えめにします。家で暮らしている普通の生活と変わりません。

このように施設でも「個の尊重」ができるためには、単に病歴やケア介護方法などの情報にとどまらず、その人となりを知ることが全ての出発点と理解されています。介護士養成大学や現場が協力して、さまざまな試みも実践されています。
例えば個人の人生アルバムをデジタル化した“デジタルストーリー”、“メモリーボックス”などはその一例です。これらはビジュアル的で理解しやすく、臨時スタッフも担当高齢者を素早く理解でき親近感もわきます。

(左)個人の人生をまとめたデジタルストーリー    (右)人生の大切な思い出の一場面を示したメモリーボックス

また、フィンランドでは介護職でありながらケアプランナーでもあり、家族や外部との連絡窓口にもなる“ MY 介護士制度 ”があります。このことが介護スタッフと高齢者の繋がりを密にし信頼関係を築く必要性をさらに高めているのだろうと思います。
その人を知り、その個人の生き方を尊重する高齢者福祉。やはり最も重要なのは「人」と「人」のアナログな関係なのですね。でも、その「人」が消耗してしまわないよう、テクノロジーの有効利用、エビデンスベースの介護、職員のウェルビーイングなどにも力を入れています。

自己表現が難しくなった認知症高齢者の夜間見守りセンサーは睡眠の質やバイオリズムを記録しますので、不眠や体調変化の実態を確認することができます。また、動きを察知してスタッフのスマホに通知されるので、不要な夜間見回りによる睡眠妨害を避けることができます。

睡眠の質やバイオリズムをチェックする見守りセンサーからの情報画面

アクティビティには高齢者の方々の若かりし頃からの時代を追ったニュース、音楽、風景、ダンスなどを再体験することができます。スタッフも共にタイムスリップしたようなレトロで楽しいアプリも開発されています。
またVRを使っての旅も楽しいですね。コロナ禍で外出が難しかった際にはバーチャルトリップ、またはTV通話が最大限利用されました。

VRでの小旅行風景♪♫

職員の心と体の健康維持も大切です。スタッフの声が聞かれるよう、敷居の低い対話と研修が繰り返し提供されますし、夏季休暇はみなさん4週間取ります。人がいないので休めないではなく、最も大切な人が壊れてしまわないよう、外部との協力をしながら人材確保もしていきます。

2月16日のオンラインセミナーでは「人をまず第一に」した高齢者福祉の現場をご紹介したいと思います。できれば、介護はロボットに頼らず「人」が行いたい。でも、その影には働く人を支えるテクノロジーと人のネットワークが欠かせないこともご紹介していきたいと思います。

現場が第一、そして介護士養成大学、また、テクノロジー等の提供で介護を支える企業の方々。これらネットワークが介護の未来を支えることは言うまでもありません。

フィンランドの事例をご紹介しながら、最期まで自分を生きるために日本の高齢者福祉の方向性について皆様と一緒に考えることができれば幸いです。

(Photo: Kumiko Hiltunen)

オンラインセミナー「フィンランドの高齢者福祉の今と未来 ~個の尊重と人を支えるテクノロジー/ネットワークのあり方~」

令和5年2月16日(木)16:00~17:15
※開催後に録画を限定公開いたしますので、当日ご都合がつかない方も是非お気軽にお申込み下さい。

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